弔問とは?伺う際の服装、挨拶、香典で注意すべき3つのマナー
弔問とは、訃報を受け、または、その情報を得て、ご遺族の中で故人のご遺志を引き継いだ喪主宅や葬儀会場を訪ね、お悔やみの言葉を述べたり、香典をお渡ししたり、ご焼香をあげたりする一連の行為のことです。
①訃報を受けお通夜前に弔問する場合と、②葬儀・告別式へ参列する場合と③葬儀・告別式へ参列できなかった場合に後日弔問する場合とがあります。
ご遺族に、粗相のない気持ちの伝え方が、問われます。
本サイトでは、
①訃報を受け、お通夜前に駆けつける弔問の注意点
②一般葬でのお通夜や葬儀・告別式に参列してお悔やみを述べる弔問の注意点
③告別式後に弔問するときの注意点と③−b家族葬での告別式後に弔問する場合の注意点と
に分けて、弔問時の服装のエチケットや挨拶・香典のマナー等を詳しく解説します。
読後、安心して弔問にふさわしい服装を装って故人とその遺族にお悔やみを伝えられます。
葬儀のスタイルの変化と弔問のあり方
家族や親族その他の故人の生前に親交のあった一般の方をもお通夜と告別式に参列していただく一般葬から、家族と親しい親族のみで、葬儀を行う家族葬が、主流になってきました。
背景としては、日本国も高齢化を迎え、生前に故人と交流のあった方を広く葬儀に参加してもらう一般葬が、むしろ参列者にも喪主にも負担が大きく、身内だけで厳かに、葬儀を執り行いたいという家族葬が、次第に普及されて行ったからです。
特に、参列者が400名を超える一般葬では、喪主をはじめとする遺族は、参列者への対応で、心安らかに、故人とのお別れをすることが、極めて困難と感じられるケースが多いです。
したがって、故人の喪主をはじめとする遺族が、家族葬を選んだ場合は、弔問客としては、心やすらかに、故人とのお別れをしたいという喪主の気持ちに寄り添う優しさが必要です。
なかには、葬儀後も故人とまだいっしょにいたくて、納骨せずに、仏壇にお骨を安置して気持ちの整理をつけようと涙ぐましい心境になられるご遺族もいらっしゃいます。
とくに、故人と近親のご遺族には、遺族として静かに故人と静かに向き合って、喪に服する権利があります。
弔問客として、「故人と遺族に、お悔やみのお言葉を捧げたい」というお気持ちもわかりますが、このお気持を最優先に考えてしまい、ご遺族の気持ちを顧みないのは、禁物です。
家族葬の場合は、喪主をはじめとするご遺族の意向を最優先する必要があります。
家族葬とは?
家族葬とは、喪主をはじめとする遺族の意向によって、故人の家族や親しい親族さらには親友などを中心に執り行う葬儀のことをいい、目安として50名以下の規模の葬儀をいいます。
家族葬はどこまでがボーダーライン?
家族葬の定義については、家族葬にいうところの「家族」の範囲が、問題になります。
家族葬を行った際に、どこまでを葬儀に招待するか?という問題です。
喪主や遺族が、心安らかに、故人とお別れをするという家族葬の趣旨から、家族葬の範囲が定まります。
同じ友人でも、故人の遺族とも親しい関係のあった友人は、家族葬の「家族」に含まれることもあります。
逆に、友人間で、差別がないように一律に、家族のみとして、葬儀を行うこともあります。
この場合は、故人の遺族と親しい関係にあった友人であったとしても、家族から除外されることになります。
ひとえに、喪主やその遺族の意向によって範囲がきまります。
※以上は、下記出典および研究者の調査を参考に、執筆させていただきました。
冠婚葬祭総合研究所 論文集(第2事業年度)―冠婚編・葬祭編―3.「埋葬」の新しい秩序の再構築 ―墓地埋葬法の改正に向けて―
森 謙二(茨城キリスト教大学)先生の論文
弔問の方法や、挨拶、服装、香典なども一般葬と家族葬で対応が異なります。
そこで本サイトでは、①訃報を受け、お通夜前に駆けつける弔問の注意点と②一般葬でのお通夜や葬儀・告別式に参列してお悔やみを述べる弔問および告別式後に弔問するときの注意点③家族葬での告別式に招待されて弔問および告別式後に弔問する場合の注意点とに分けて、弔問時の服装のエチケットや挨拶・香典のマナー等を詳しく解説します。
読後、安心して弔問にふさわしい服装を装って故人とその遺族にお悔やみを伝えられます。
弔問客としての服装、挨拶、香典で注意すべきマナーその1お通夜前 一般葬・家族葬共通
①訃報を聞いて、お通夜前に、故人の自宅に、駆けつける弔問
まずは、お通夜前に、弔問してもいいか?どうか?ご遺族に確認にて電話をします。「今は、家族だけで、過ごしたい」と言われた場合は、弔問そのものを辞退します。
お通夜前の喪主宅では、菩提寺がある場合、その住職に、導師を依頼したり、また、葬儀社との打ち合わせなどで、大変忙しい状況になっています。
「今は、家族だけで過ごしたい」という言葉の背景には、このような状況があることを、想起して、喪主に寄り添う気持ちが重要です。
①−ア 弔問しても問題のない方
一般葬・家族葬問わず、お通夜前の故人のご自宅では、喪主をはじめとして、その家族も葬儀の準備で、慌ただしい状況に置かれています。
このような状況の中で、弔問するのは、訃報を聞き、着のみ、着のままで、故人のもとへ馳せ参じたという感情が出て、しかるべき関係にある方です。
そのような関係とは、故人と生前に、ご贔屓にされていたご近所の関係の方などです。
①−イ 服装や挨拶、香典について
甲)服装について
平服で弔問します。
お通夜前の故人の自宅では、故人の遺体が、安置され、お焼香ができるように、準備がされていることが、ほとんどです。葬儀社がそのように段取りをするからです。
このような状況の中で、喪服を着用して、弔問するのは、故人の逝去を予期していたかの感があり、遺族側に対しするマナー違反となります。
また喪主は、まだ喪服を着用している状況ではないです。したがって、この段階で、弔問客が、喪服で訪問するのは、喪主よりも格式が上になり、この観点からもマナー違反の可能性があります。
着のみ、着のまま駆けつけたという言葉が、まさにぴったり当てはまり、服装は、仕事に着ていくスーツのままでもいいです。ネクタイもそのままでかまいません。
※黒系のネクタイに替えていくのは、お通夜のときに、スーツで弔問するケースです。
本来、お通夜に段階に進んだ時点で、喪主はいわゆる喪に服した状態になり、喪服を着用します。
この状態で、弔問客が、仕事からの帰り途などで、喪服に着替える余裕がなかった等の場合は、スーツでも許されます。
ただし、喪主は、すでに、喪服で喪に服しているので、柄もののネクタイは、キヨスクなど、弔問の途上で、購入できる簡易ショップで、黒ネクタイに替えて、訪問するのがマナーになります。
乙)挨拶について
「このたびは、〇〇さんが、お亡くなりになられたと伺い、お線香をあげさせていただきに参りました。」
という挨拶が無難です。「ご愁傷さまでした」等の挨拶は、お通夜や告別式での挨拶の言葉になります。お通夜前の弔問では、訃報の知らせをいち早く聞き、着のみ着のままで駆けつけたという臨場感が、でる挨拶の言葉として、上記の挨拶が無難です。
さらに、ご遺族が、弔問客であるあなたと、故人との関係を知らない場合は、生前にどういう関係があったか?を上記の挨拶のあとに簡潔に、説明します。
丙)香典について
お通夜前の弔問にて、香典をお渡ししても構いません。ただしお通夜前では、葬儀の受付の方が、いないです。したがって故人の遺体の前の祭壇に、捧げて、合掌し、お線香をあげる形が自然です。
後日に、お通夜や告別式に参列したときに、受付の方に、香典はすでにお渡ししてあります。と一言添えてください。
弔問客としての服装、挨拶、香典で注意すべきマナーその2一般葬 お通夜・告別式
②一般葬での通夜や葬儀・告別式に参列してお悔やみを述べる弔問
②−ア)通夜や告別式に参列してお悔やみを述べる弔問
②−ア(ⅰ)お通夜のみの弔問
甲〕服装について
告別式に参列できずに、お通夜のみに弔問して、お悔やみを述べる場合
平服でもかまいません。お通夜では、訃報の知らせを聞いて、着のみ着のままは駆けつけたという臨場感が、かえってマナーに合うからです。
お通夜に、喪服を着て弔問するのは、故人が、逝去されるのを待っていましたかのような感覚を喪主に与えてしまうため、むしろマナー違反となる余地もあります。
ただし、訃報にお通夜と告別式の日程が、しっかりと伝えられている場合は、この限りではありません。
この場合に、喪服でお通夜に弔問されても、お通夜の日程が、告知されているので、その日程に合わせて、喪服を着て参列したまでで、けっして、故人が逝去されるのを待っていましたか?の感覚を伺わせるものではないからです。
最近では、お通夜は、葬儀社のセレモニー館で執り行われることが多いですから、喪主は喪服でお通夜を過ごします。それにあわせて、お通夜への弔問客が、喪服で参列するのは、むしろ自然かもしれないです。
乙)挨拶について
「このたびは、ご愁傷さまでした。お悔やみ申し上げます。」とあいさつします。
丙)香典について
受付で、あなたの香典での差し出し名が、受付の方に読めるように、向きを整えてお渡しします。
一般葬の場合、お通夜で、受付けがある場合がほとんどです。受付けで、香典をお渡ししてもかまいません。
②−ア(ⅱ)告別式のみに参列 お通夜には、参加せずに告別式のみに参加して、お悔やみを述べる場合
甲)服装について
いわゆる礼服として、着用する喪服が定番です。
服装のマナーとして、着物で家紋の入った正式喪服は、喪主が、同様に家紋の入った着物の正式喪服を着用していないかぎりマナー違反です。
弔問客の方が、格式が上になってしまうからです。
乙)挨拶について
「このたびは、ご愁傷さまでした。お悔やみ申し上げます」
丙)香典について
受付で記帳の上、お渡しします。一般葬は、通常はセレモニーの会場での葬儀になります。故人の親族の方や、地域のボランティアの組合の方などが、通常は受付を担当します。
一礼をしてから、香典入れや風呂敷につつまれた香典を取り出し、名前を受付の方が、読める向きにして、差し出すのが、お渡しするときのマナーです。
②−イ(ⅲ) お通夜と告別式と双方に参列する場合
甲) 服装について
喪主が、一般葬を主催した場合は、お通夜も告別式も葬儀社のセレモニー会場で執り行われるのが、通常です。
この場合、喪主は、いわゆる礼服を喪服として、着用するケースがほとんどです。
弔問客が、お通夜にも告別式にも、参列する場合は、喪主の喪服の格式よりも上にならないいわゆる礼服にて、着用するのが、マナーです。
乙 挨拶について
このたびは、ご愁傷さまでした。お悔やみ申し上げます。
丙)香典などのマナー
告別式にも参列する場合は、記帳の際に、「香典は、お通夜にて、お渡ししました」と受付の方に一言添えるだけでOKです。
お通夜ないしは、告別式のいずれでお渡しする場合も、一礼をしてから、香典入れや風呂敷につつまれた香典を取り出し、名前を受付の方が、読める向きにして、差し出すのが、お渡しするときのマナーです。
弔問客としての服装、挨拶、香典で注意すべきマナーその3一告別式後 一般葬・家族葬
③−ウ 一般葬・家族葬において、告別式後に弔問するケース
後日の弔問では、まずは、ご遺族に弔問する旨の確認の電話をします。「今は、家族だけで、喪に服したい」といわれた場合は、弔問を辞退します。
このような場合は、ご遺族が、静かな日常空間の中で、故人とお別れをしたいという意向が強いので、弔問そのものを辞退するのが無難です。
「おこころ遣いいただきありがとうございます!いつ頃にお見えになられますか?」といわれたら、こちら側の弔問の予定日を告げます。
また家族葬を済まされたご遺族には、「お香典を捧げさせていただいてもよろしいでしょうか?」と確認します。
③−ウ(ⅰ)喪主が家族葬を選んだ場合に葬儀に行けずに、葬儀後に弔問するケース
甲) 服装について
家族葬では、故人の家族や親類・親友以外は、一般葬と異なり、お通夜や告別式に参列できないケースが多いです。
その結果、家族以外の遠い親族や一般の方は、告別式が済んでから、はじめて訃報を知り、後日にいわゆるお線香をあげさせてくださいという形での弔問になるケースが多いです。
告別式の後日の弔問では、葬儀社のスタッフは、いなく、喪主やその家族のみで、対応することがほとんどです。
この場合に、喪主やその家族は、平服で対応します。
したがって、告別式の後日に、弔問する場合の服装も、平服を着用するのが、常識的な装いとなります。
もっとも平服といっても、夏場に肩まで露出したドレスなど、弔問客として、不適切な平服での着用は、マナー違反となります。
乙)挨拶について
「このたびは、ご愁傷さまでした。心よりお悔やみ申し上げます。」と葬儀での挨拶と同じです。ただし、「葬儀に参列できずに申し訳ございませんでした。お線香をあげさせてください。」と続けて、言葉を添えます。
丙)香典などのマナー
喪主が、家族葬をえらんだ場合、一般参列者を念頭に置かず、香典返しの贈り物の準備もしていないケースがあります。もちろん葬儀後の弔問に備えている場合もあります。
この場合、故人とご縁のあった方、または、過去に故人から香典をいただいていた故人の友人のご遺族などが、葬儀に参列できない結果、お線香をあげさせてくださいと、葬儀の後日に弔問します。
このいずれの方も、香典を携えて、弔問に赴くのですが、、香典返しを準備していない喪主は、香典を辞退することがあります。香典返しをお渡しできないまま香典を頂くのは、心苦しいと感じるからです。
この場合は、喪主や遺族の意向に沿うように、「畏まりました」と一言添えて、香典を引き下げるのが、マナーです。
けっして、「うちの〇〇の葬儀の際に、故人から、香典をいただいていたので、お受け取りください」と、無理にお渡ししないことです。
香典を辞退しそうなケースでも念のため、持参します。
あなたの家族にたとえば、おじいさまAがいて、過去に逝去したころに、友人のご近所のおじいさまBが、その訃報を聞いて、弔問にかけつけて、香典を頂いていたとします。
その後、ご近所の、その弔問にかけつけてくれた友人のおじいさまBが、亡くなられ、逆にあなたが弔問して香典を渡しました。
今度は、ご近所の弔問にかけつけてくれたおじいさまBの奥様であるおばあさまCが亡くなられた場合、再度、あなたが弔問して香典をお渡ししようという状況では、香典を辞退する可能性があります。
特に、奥様である、おばあさまCと、そのこどもの世代の家族が、遠くの地で別々に暮らしているような場合は、なおさらです。次にあなたの家族になにかあったときに、訃報を知る可能性が、極めて低いからです。
ただし、このような場合に、香典を辞退するかどうかは、弔問前にお電話で確認しにくい事象です。したがって、相場よりも金額が安い5千円の香典を持参しておくのが無難です。
あなたの弔問時に香典を辞退されれば、そのまま「畏まりました」と、香典を渡さずに戻ればよろしいし、逆に、香典を受けとられるのなら、そのままお渡ししてくればよいからです。
③−ウ(ⅱ)喪主が一般葬を選んだ場合に葬儀に行けずに、葬儀後に弔問するケース
甲)服装について
告別式以降の後日では、喪主は、平服で弔問客の応接をします。
弔問のルールとして、喪主よりも格式が上となる服装は、マナー違反となります。
したがってこの場合の弔問の服装は、平服です。
ただし、平服といっても、弔問にふさわしい品格のあるものが要求されてきます。
肩の露出したドレスなどは、マナー違反の可能性がでます。
乙)挨拶について
「このたびは、ご愁傷さまでした。心よりお悔やみ申し上げます。」と葬儀での挨拶と同じです。ただし、「葬儀に参列できずに申し訳ございませんでした。お線香をあげさせてください。」と続けて、言葉を添えます。
丙)香典について
喪主が、一般葬を選んだ場合、後日の弔問客のための香典返しを準備しているケースが大半です。
一般葬の場合、過去に故人が、弔問客として、香典を持参した家の人が、今度は、香典を持参して、葬儀に参列するのが、通例です。
故人が、過去に香典を持参した家の数を念頭に、喪主が、香典返しの品を揃えるのが常識になっています。
したがって、お通夜や告別式に、行けなく、後日の弔問になってしまった場合でも、喪主は、香典返しを準備しているので、香典を渡すのが、むしろ常識です。
ただし、過去に故人から香典を頂いた家の方ではなく、会社の同僚などの方が、葬儀の後日に弔問する場合は、喪主が香典を辞退するかもしれません。その場合は、喪主の意向に従います。